第20章 2人の夜
太:「朝まで一緒に居たい…」
彼女を抱き締めたまま、そう言うと、俺の背中にあった彼女の手がパッと離れた。
身体を少し離して顔を見ると、真っ赤になってる…
この街灯1つの暗闇でも分かるぐらい。真っ赤だ…
淳子:「えっと…そう言うのは…あの…なんといいますか…」
彼女の動揺が面白くて、可愛いくて、俺はまた抱き締めた。
太:「何もしないから…」
そう言うと、静かに頷いてくれた。
ホテルの部屋に入ると、また夜景がキレイだった。
喜ぶ彼女が可愛いくて、部屋の灯りは付けなかった。
急に静かになった彼女に近付くと、涙ぐんでる。
太:「どしたの?」
後ろから抱き締めて聞いてみた。
淳子:「キレイすぎて、嬉しすぎて、幸せすぎて…なんか、怖くなった…」
淳子:「太輔くん…」
彼女が震えながら、泣きそうなのを堪えてる。
太:「大丈夫だよ…オレは何処にも行かない。淳子さんを絶対一人にしないよ。大丈夫。大丈夫だから…」
彼女を振り返らせて、顔を見る。
不安な気持ちが隠せて居ないのに無理して笑う彼女を抱き締める。
愛する人を一度失った彼女が、俺を選んでくれたのは、ものすごく勇気が必要だったんだと、今さらながら実感した。
彼女をベットに座らせて、俺は地べたに座って、彼女を見上げた。
両手を握って、顔を見て、「大丈夫?」と呟くと、少し安心したのか、笑顔になった。
太:「落ち着いた?なんか飲む?」
そのまま顔を覗き込んで聞くと、
淳子:「ありがとう♪大丈夫。ごめんね…」
淳子:「なんか、うち泣いてばっかりじゃない?恥ずかし…」
自分の頬に両手を当てて、恥ずかしそうに笑った彼女を見て思い出した。
病院のベットでみた、白い空間の夢…
あの男の人は、たぶん、旦那さんだ…
だから、写真を見て、見覚えがあったんだ…
泣き虫をお願いしますって…
淳子さんの事、託してくれてた…?
彼女を見上げたまま、俺はもう一度、彼女の手を取った。優しく微笑む彼女に
太:「もう泣かせないよ…」
そう言って、手にキスをした。