第20章 2人の夜
太:「ちょっと寄りたいとこがあるんだけど良いかな?」
そう言って、車をだした太輔くんの運転する姿を見ていた。
キレイな横顔。スッとした鼻と、ポッテリした唇。優しい目。
男らしさの中に、少年っぽさもある…
太:「どうしたの?じっと見られるの恥ずかしいんですけど?」
太輔くんが笑いながら言った。
淳子:「こんなに素敵な男性が隣に居るんが信じられやんくて…夢なんかと思ってた…」
太輔くんは優しく笑うと、私の手を取って、
太:「夢じゃないでしょ?」
そう言って手を唇に押し当てた。
私の太輔くんにキスされた手は、ずっと返してもらえず、目的地に着いたのか、車が止まった。
波の音がした。
暗い海に波打ち際だけ白くなって、ポツポツある明りが海岸の形を作ってる。
太輔くんが車から降りて、砂浜を歩いてる。
追いかけて少し後ろを歩いた。
太輔くんが何も言わず、手を差し出したので、黙って重ねた。
ただ、砂浜を二人で歩いた。
しばらくして、太輔くんが立ち止まった。
淳子:「太輔くん?」
正面に立って、私を見つめる太輔くん。
太:「淳子さん、オレ、貴女が好きです。あきらくんも大好きです。後悔させないし、オレもしない。だから、オレとつきあってください!」
頭を下げて、手を差し出してくれた。
年上の子持ちなのに…
大事にしてくれる気持ちが嬉しくて、涙が出た。
太輔くんが気付いて、涙を拭ってくれる。
優しい気遣いに、また涙が溢れる。
空に満天の星が輝いてて、1つがキラッと光った気がした。ありがとう…拓矢…
淳子:「…1つ約束してくれる?しんどくなったら、必ず言うて…なんでも、どんな時でも。一人では絶対抱えこまんとって…重荷になりたくない…いつも、太輔くんには輝いててほしいから…」
淳子:「約束してくれる?」
私の頬にあった太輔くんの手が頭へ移動する。
髪を撫でながら、静かに頷いた。
太:「…約束する…」
見つめてくれる太輔くんに、私から抱きついた。
淳子:「…よろしくお願いします」
そう言うと、強く抱き締めてくれた…