第16章 縮まる距離
ドアを開けてくれたのは、あきらくんだった。
まだ、パジャマのまま、手に戦隊ものの人形を持ってる。
淳子さんも来て、あげてくれた。
二人とも元気そうで安心した。
あきらくんがおもちゃを選んでる間に淳子さんと目が合ったのに、逸らされた。
避けられてる理由を聞こうとキッチンへ行った。
淳子さんは明らかに俺の態度がおかしいのに気付いてるようで、動揺が隠せていない…
言い訳がましい言い訳をするので、目を合わせてやろうと思って、顔をこっちに向けさせた。
すると、みるみるゆでダコみたいに紅くなって、目をウルウルさせてきた。
ヤバイ!マジで可愛い!これは、嫌われてるんじゃない!きっと、逆だ!
嬉しくて、抱き締めて、キスしたくなってきたけど、あきらくんが起きてるし、ここは我慢して落ち着こうと、彼女から離れた。
キッチンから出て彼女を見ると、元の彼女に戻ってて、あきらくんの朝ごはんの準備をしている。
俺の視線に気が付いてこっちを見た。今度はいつもの優しい笑顔で笑ってくれた。
ゆでダコになってた彼女と、今笑いかけてくれた彼女のギャップに俺はドキドキした。
いろんな顔を見せてくれる彼女が、やっぱり好きだと実感した。
あきらくんの朝ごはんができて、ダイニングのテーブルに淳子さんと並んで座って、食べ始めた。
俺はそんな二人をリビングのソファに座ってコーヒーを飲みながら眺めた。
ふと、寝室から心地好い風が入って来て、窓際の写真たてが目に入った。
淳子さんとあきらくんと、旦那さん…
ん?旦那さん!?
太:「淳子さん、あの窓際の写真たての写真見せてもらえない?」
指差して淳子さんを見ると
淳子:「いいよ?どしたん?」
あきらくんの口を拭いてたタオルを置いて、写真たてを持って来てくれた。
太:「旦那さん?」
淳子:「うん…」
写真の中の男の人は満面の笑顔であきらくんと淳子さんを抱いている。
この人、見たこと…ある…?
太:「どっかで会った事なんてないよね?」
あきらくんの隣に戻った淳子さんに聞く。
淳子:「えっ!?ないと思う…1回会社から出張と名ばかりの観光に来てるけど…」
そう言って、あきらくんと手を洗いに行った。