第14章 必要な時間
ついにドラマの撮影が始まって、やっとあきらくんと一緒の日が来た。
あきらくんと一緒に撮影所に入って来た彼女は、デニム生地のロングスカートに、淡い水色のセーターを着ている。
初めて会った時以来のスカート姿にドキドキした。
いろんな人に挨拶してる。
あきらくんが俺に気付いて、両手をあげて走って来た。あきらくんは、いつも笑顔で抱き付いてくれる。だから、俺も抱き締めてあげる。
彼女も笑いながらこっちに来た。
淳子:「おはよーございます。あきら、ちゃんとごあいさつした?」
あきらくんが、顔だけ離して、
あ:「太ちゃん、おはよー♪」
と言った。
淳子:「こら!あきら!おはよーございますやろ?」
あきらくんは、いそいそと俺から降りると、正面に立って挨拶してくれた。
そんなあきらくんを見て、淳子さんはニッコリ笑った。
太:「今日からよろしくね♪毎日会えるね♪」
あ:「うん!ママから聞いたよ!僕頑張るね♪」
いつの間にか、しっかり話せるようになってた
あきらくんに驚いた。出逢った頃はまだそんなにはっきり話せてなかったのに…
そんな事を思っていたら、木村さんも来たので、撮影が始まった。
あきらくんは基本、演技ではなく、おもちゃで遊んだり、抱っこしてもらったり、走ったりするだけみたいで、撮影は順調に進んだ。
セリフは、「父ちゃん」と「たいちゃん」。
脚本家さんがあきらくんと話して決めたらしい。
あきらくんの撮影時間は決まってるので、15時になると帰る。だから、空き時間には必ず遊んであげた。毎日、いろんなおもちゃや絵本を持って来てくれる。
そして…必ず傍には彼女が微笑みながら座ってる…
それが一番嬉しかった。