第14章 必要な時間
突然の夜の訪問から、あっという間に3ヶ月が過ぎた。
太輔くんとは、相変わらず、あきらの写真を送って、ちょくちょく近況報告したりしてた。
あきらの仕事も増えてきた。
幼稚園の遠足があったり、発表会があったりで、あっという間に春が来た。
拓矢が居たら、どんなに喜んだだろうなと発表会を見た日は久しぶりに泣いてしまった。
発表会の動画を実家と拓矢の両親に送った。
拓矢とは後日、一緒に夜中に見た。
写真の中の拓矢はニッコリ笑顔で、私の撮影方法を褒めてくれてる気がした。
前:「葉山さん、いよいよ、あきらくんのドラマデビューですよ!」
淳子:「えぇ!そんなん無理ですよ!決まったんですか?」
前:「そんな事ないですよ!あきらくん、頑張ってレッスン受けてるじゃないですか!ほぼ決まりなんですよ♪うちのやつのドラマだから♪」
あきらのマネージャーの前田さんが嬉しそうに話してくれた。
夏の放送に向けて、春から録り始めるらしい。
内容はまだナイショだからと、教えてもらえなかった。
今日はそのドラマの顔合わせ。
あきらの付き添いで、私も一緒に入れるらしい。
主だった出演者と、プロデューサーや脚本家などが集まるらしい。
ドキドキしながら、隅の席に座っていると、役名のところに座って下さいと言われて、中央の向かって右側の席を案内された。
あきらはだいぶ、この世界に慣れたようで、あまり走り回らなくなった。嬉しいような、悲しいような…
そんな事を思っていると、ガヤガヤとたくさんの人が一斉に席に付いた。
そして隣を見てびっくりした。
木村拓哉が!木村拓哉が!主演かぁ!だからあきらが…
そして、木村拓哉の奥には太輔くんが座っている。
木村さんと太輔くんが、異父兄弟で、木村さんの子どもがあきらの役。
奥さんに先立たれて、あきらと二人で暮らしてる木村さんのところに、太輔くんがやってきて、3人で暮らし始めて、仕事に恋に頑張る話らしい。
太輔くんが、私の視線に気がついて、テーブルの下でピースしてきた。
太輔くんは知ってたんだ!
木村さんも、前に話した時、あきらと一緒の仕事がとか言ってた!
頭の中で、小さな怒りの煙がプスプス出ていたけど、あっという間に消え去った。
なぜなら、いただいた台本なるものに、あきらのセリフがあると言われたから!