第13章 気持ち
こんな気持ちのまま、淳子さんに会いに来たのは、失敗だった。
目の前の淳子さんは、ピンク色のパジャマに黒いロング丈のカーディガンを羽織ってて、グレーのズボンに靴下とレッグウォーマーをしている。レッグウォーマーがこんなに可愛いなんて、初めて知った。
淳子:「お腹は?空いてない?」
立ち上がってキッチンへ歩いて行く。
俺がここに居るのが当たり前みたいで、嬉しかった。
太:「ありがとう♪大丈夫だよ」
太:「こんな時間に、あんな格好で出歩いちゃダメだよ?何してたの?」
おかわりを入れて、淳子さんが戻ってきた。
淳子:「ふふ。月が綺麗やったから外で見ようと思って…そしたら、太輔くんに似た人が見えたから…」
太:「似た人って、オレじゃなかったらどうすんの!?危ないから、もうしちゃダメだよ!」
キリッと真面目な顔をして、淳子さんに言うと、
淳子:「ふふふ。了解♪もうしません」
優しく微笑んだ。
あぁ、やっぱり、俺はこの人が好きだ…
今、この時間がずっと続いてほしいと思う…
彼女が造り出す、この心地好い空気が俺を幸せにしてくれる…優しく包んでくれる…
木村さんに言われた事はちゃんと考えなきゃダメだと思うけど…
俺が幸せにしてあげたい…今の俺のように…
彼女もあきらくんも…
自分の想いを再確認してしまった。
あきらくんが、寝返りをして、低いベットから足が落ちたのが見えた。
彼女も気付いてその脚を布団に入れて、頭を撫でている。
静かに彼女の横に座ってあきらくんの寝顔を見た。
太:「可愛いね…」
淳子:「ふふ。天使みたいやろ?うちの子♪」
おどけて言った彼女の横顔は、薄暗い部屋の中でも、幸せそうに見えた。
太:「じゃ、あきらくんの顔も見たし、今日はもう帰るね」
太:「こんな遅くにすいませんでした」
玄関で、自分の上着に手を通しながら頭を下げた。
彼女は腕をくんで笑ってる。
淳子:「いえいえ。うちも会いたかったから、嬉しかったよ♪でも、次はあきらの起きてる時間に来てほしいな♪今日も頑張って待ってたから…」
笑いながらそう言って、俺の上着の襟を直してくれた。
些細な事なのに、自然な彼女にドキドキする。
木村さん、俺が彼女に落ちてます…