第13章 気持ち
勘違いも甚だしい。恥ずかしすぎる。
そう言われてみれば、二人の共通点は子持ち。
しかも、男の子と女の子で違うから、話が盛り上がったんだ。
木:「気が付いた?お前、さっきからずっと眉間に皺寄せてたぞ?」
木:「もっとよく考えてみろよ。オレ、淳子ちゃんと会ったの、さっきが初めてだし、数分話しただけで、オレが惚れると思う?」
木:「まぁ、世の中には一目惚れってのがあるけどさぁ…」
木:「お前、そう言うのなんて言うか知ってる?惚れた欲目って言うんだよ。お前みたいに、みんなが淳子ちゃんに惚れると思ったら大間違いだぞ」
木:「面白い子だったけどな」
木村さんは、笑いながらそう言って、目の前の焼き鳥に手を伸ばした。
木:「話してみろ。聞いてやるから…」
俺は、渉にしか話してなかった事をすべて話した。
夢の中に彼女が出てきた事、それが泣いてた事、偶然コンサートで会えた事、デートした事、彼女の旦那さんの事…
それから、彼女の事が好きだって事…
木村さんは静かにじっと聞いてくれてた。
話終わった俺は、「いただきます。」と言って一口ビールを飲んで木村さんを見た。
木村さんは、俺の視線に気が付いて目を合わせた。
木:「お前ら、今結構大事な時期だと思うけど、自覚してる?お前」
太:「…ハイ」
木:「お前のその気持ちは、彼女も巻き込むんだぞ?」
太:「…ハイ、分かってます」
太:「でも!どんなに頑張っても、彼女はオレの中から消えないんです」
太:「今まで、正直女性に不自由した事なかったし、望めばすぐ手に入ってきました。だから、今の自分が信じられないんです…」
太:「誰かを想って一喜一憂するのは初めてなんです!」
木:「初めてだから、簡単に落ちない相手だから落としたいだけなんじゃねぇの?」
木村さんから言われた言葉に愕然とした。
そんな事思いもしなかった。
ただ、会いたくて、傍に居たくて、抱き締めたい。声が聞きたくて、彼女を感じていたい。
それが、落ちない相手を落としたいだけ?
太:「…」
木:「なぁ、太輔。お前まだ26?7だったっけ?
ただ、一緒に居たいだけなら、若い子にしとけよ」
木:「頭ごなしに反対してるわけじゃねぇよ?ただ、お前のまだまだ先の長い人生が、彼女と一緒で良いのかは、オレにはわかんねぇからな?」