第11章 距離
石鹸の香りがふわっとして、優しく誰かに呼ばれた気がする。
けど、まだ寝ていたくて、この空間がすごく心地好くて、肩に乗ってる手をポンポンと叩いてまた、眠りに付こうとした。
淳子:「太輔くん…起きて…帰って寝た方が良いんちゃう?」
淳子さんの声?
淳子:「太輔くん…太輔くん…」
淳子さんの声…淳子さんの声だ!
勢いよく起き上がったので、淳子さんがびっくりしてる。
淳子:「良かった♪もう11時やで?帰って寝た方が良いんちゃう?」
笑いながら、あきらくんの服を畳んでる。
シャワーを浴びたようで、濡れた髪をまとめあげてる。オレンジ色の部屋のライトで、うなじが妙に色っぽい。
太:「ごめん。オレ寝ちゃったんだね。起こしてくれれば良かったのに…」
ほんとはまだ、一緒に居られる事が、起きてすぐに彼女が居るのが、嬉しかった。
淳子:「お越したよ~?けど、全然起きやんかったの!明日の朝は早くないん?大丈夫?」
笑いながらこっちを見た。
太:「10時入りだから大丈夫。淳子さんこそオレがベット占領してて眠れなかったよね?」
淳子:「ううん。どうせまた寝れやんから」
苦笑いして窓の外を見た。
太:「淳子さんが眠るまで側に居よっか?」
側に居たい。居させてほしい…
ベットから降りて淳子さんの隣に座った。
淳子:「イヤイヤ!大丈夫!今日は色々あったから疲れて寝れるかも!?だから大丈夫!心配してくれて、ありがとう。太輔くんはほんまに優しいなぁ。大丈夫やから、もう帰り?」
ニコっと笑って俺を見た。
俺は彼女から離れたくなくて、何も言わずにじっと見つめてしまった。
太:「…」
淳子:「太輔くん?ち、ちょっと!そんなに見られるとめっちゃ恥ずかしいんやけど!太輔くん、自分の男前℃自覚してる?汚い肌ら見やんとって!もぅ!」
彼女は慌てて反対側のソファに座って、鞄の中を漁ってる。
淳子:「ふふ、ほら、見て?明日、あきら とディズニーランド行くねん♪そいや、太輔くん、ディズニーランド好きよな?ふふ、代わりに行って来てあげる♪」
俺がマネージャーから預かった封筒の中のチケットを見せて嬉しそうに言った。