第10章 涙の理由(わけ)
淳子:「<生きて。あきらの為にも。今までありがとう>て、手を握ってくれて…」
彼女が泣いてるのが分かった。
我慢しながら話してくれてたのも…
太:「ごめん。まだ、無理だよね?話さなくて良いよ?」
彼女が俺の方に振り返った。
まさに、夢が現実になった。
あの夢と同じ顔の淳子さんが居た。
だから泣いてたのか… 理由が今、分かった。
夢と違うのは、抱き締めてあげられる事。
俺はゆっくりと泣いてる彼女を抱き寄せた。
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太:「側に居るから。泣いて良いよ…」
泣き出した私をそっと抱き締めて、太輔くんが言った。
さんざん泣いたのに、涙は止まる事を知らずに溢れでる。
どれぐらい泣いただろう。
ずっと抱き締めてくれてた、太輔くんのセーターがぐしゃぐしゃになってる。
淳子:「ごめん。服汚れた…」
そっと太輔くんの胸を押して少し離れた。
太:「んなの大丈夫だから」
太:「大丈夫?落ち着いた?」
心配そうな顔で、覗き込んできた。
慌てて背をむける。
太:「え?」
淳子:「顔、偉いことになってるから!見られたくない!」
太:「ふふ。何言ってんの?」
太:「また変な事気にするね」
笑いながら、後ろからまた私を抱き締めてくれた。
最愛の人を突然失って、どうして良いか分からずにただ、泣いて過ごしてた。
けど、あきらの為にも、泣いてばかりも居られないと思って、社長と話す決心をした。
抱き締めてくれる太輔くんに甘えて、また泣いてしまったけど、今日で終わりにして、前へ進まないと。
淳子:「ありがとう。顔洗ってくる」
そう言って、太輔くんの腕をほどいた。
顔を洗って戻ると、太輔くんがあきらの寝顔を見ながら横になってる。
淳子:「太輔くん!寝てしまったら大変!」
肩に手を置いて揺すってみたけど反応がない。
覗き込んでみたら、キレイな寝顔が現れた。
ドキッとして、慌てて離れて呼吸を整える。
時計を見るとまだ、夜の7時を少し回ったぐらい。少し寝かせてあげる事にした。
拓、どうしたら良い?ここで頑張ってみる?賛成してくれる?
そう思いながら、窓の外で、ネオンに邪魔されながら輝いてる星に手を振った。