第10章 涙の理由(わけ)
太輔くんがホテルまで送ってくれる事になった。
見られたりしたら大変だからと断ったけど、譲ってもらえず、駐車場を3人で歩いてる。
あきらは横尾さんと宮田さんにもらったジュースとお菓子を持って、上機嫌だ。
高級そうな大きな車の側で太輔くんの足が止まった。
太:「オレの。乗って?」
そう言うと助手席のドアを開けてくれた。
淳子:「ごめん、太輔くん。あきらが居るから後ろやないと。チャイルドシートないからよけいに。大丈夫かな?怖いわぁ。検問とかないよなぁ…」
太:「そか!チャイルドシートが居るんだよね?さすがにそれはないなぁ…」
太:「ここからは近くだし、後ろであきらくん抱いてて」
乗り込んで、あきらが動かないように抱き締める。
ほんとにあっという間にホテルに着いた。
淳子:「太輔くん。ありがとう。もう大丈夫やから行ってよ♪」
太:「ダメだよ。また倒れたらどうすんの?心配だから部屋まで行く。それにカードキー預かってんのオレだしね♪」
そう言って、慣れた手つきでダッシュボードから帽子とマスクを取り出す。
太:「さ、行こう。あきらくんおいで?」
平日の夕方のホテルには、あまり人は居ないようで、そのまま誰に会う事もなく、部屋までたどり着いた。
この短い距離で、太輔くんに抱いてもらってたあきらは眠ってしまった。
太輔くんにそのままベットまで運んでもらった。
淳子:「何から何までありがとう。コーヒーでもどう?これやけど…」
ホテルの備え付けのインスタントを見せた。
太輔くんは笑って頷いて、窓の外を見てた。
太:「大変だったね…」
言いながら私の側のソファへ座った。
ドキッとして、カップの用意をしていた手を止めた。
淳子:「マネージャーさんから聞いた?連絡せんとごめんね。ちょっと余裕なくなって…」
太:「ううん。そんなの当たり前だよ」
淳子:「あまりにも急で…何が起こってるか整理できずに1か月が経って、49日が済んで初めて理解できたんよ」
淳子:「毎日どうやって過ごしてたんか覚えてない。あきらにちゃんとしてあげてたかも…」
淳子:「マネージャーさんが来てくれて、実家の母が一緒に話を聞いてくれてて、気分転換にもなるしって送り出してくれたん」