第10章 涙の理由(わけ)
ソファに寝ている淳子さんは、よく見るとずいぶん痩せている。デートの時は少しだけぽっちゃりしてた。彼女は気にしてるようだったけど、俺は健康的で素敵だと思ってた。
抱き上げてすぐにマネージャーが来た。
マネ:「葉山さん!どうしたんだ!?」
近くの空いてる部屋へ、二人を連れてみんなで入った。
あきらくんは玉森とトーマスで遊んでいる。
マネ:「全員来てくれたんだな。助かるよ。話ってのは、葉山さんの事なんだ」
マネ:「まだ、葉山さんから返事はいただいてないんだが、社長があきらくんをうちにスカウトしたんだ」
マネ:「それで、少しの間、私が彼女達の世話係になったから、時々今日みたいに行けない時があるんだ」
横:「あきらくん、可愛いもんね」
北:「オレらは大丈夫。問題ないですよ。けど、最年少ですよね?てか、異例!?」
玉:「あきらくん、お兄ちゃんとおっかけっこしよっか!」
あきらくんが、そろそろ座ってられなくなったようで部屋の中をうろつき始めた。
宮:「なんか飲み物買って来てあげる!」
横:「じゃぁ、オレはおやつ買いに行ってこよっかな」
二・千:「追っかけっこしよ~!」
北:「お前ら!静かにしろよ!」
北:「玉、追っかけっこならあっちの…」
話ながらみんなわらわら出て行った。
あきらくんが淳子さんを見て小さく「ママ」と言った気がした。
やっぱり心配だよな…あきらくんの側へ行き
太:「大丈夫だよ」
頭を撫でてあげた。
太:「もう少しママ、寝かせてあげようね」
太:「おっかけっこしておいで?」
あきらくんを送り出して、淳子さんの側に座った。
太:「あれからも探してたんすか?」
マネ:「あぁ。以前に教えてもらった住所まで行って来た。それで、連絡取れなかった理由が分かったよ」
続く言葉を言うのを躊躇った様子だった。
マネ:「旦那さんが、交通事故で亡くなったそうだ」
太:「え?!」
俺は淳子さんを見た。
連絡して来なかったのは、しなかったんじゃなくて、出来なかったんだ…
旦那さんが、亡くなった。
だから、そんな余裕がなくて…
こんなに痩せたのも、きっと…
頭をゆっくりと撫でてあげると、一筋の涙がながれた。