第6章 余韻
予定していた時間まで、あっという間に過ぎていって、もうお別れの時間。
あきらは寝てしまった。
午後からはほんとの家族みたいに太輔くんがあきらを抱いて、私と手を繋いで回ってくれた。
ベンチに座って、手を繋いだまま、あきらの寝顔を見てる。
淳子:「太輔くん、今日はほんまにありがとう。楽しかったし、めっちゃ幸せやった。あきらもよ~甘えて。お疲れ様でした。こんなおばちゃんと子どもの相手さしてもてごめんよ」
太:「おばちゃんて誰の事?歳なんて関係ないよ。オレもすげぇ楽しかったし、幸せだったよ。ありがとう♪」
太:「でさ、お願いがあるんだけど…」
淳子:「え?うちに?何?何?」
太:「連絡先教えてほしいんだけど。あきらくんの写真とか、送ってほしいんだ。オレ、あきらくんの事大好きなんだ」
淳子:「そんなに可愛がってもらえて、こっちこそありがたいわ。ありがとう。けど、連絡先なんか教えて良いん?」
太:「淳子さん、教えたら悪用するの?」
淳子:「するわけないやん!誰にも言わずにニヤニヤしとく♪」
太:「じゃ、大丈夫じゃん。スマホ貸して」
繋いでた手を離して、鞄からスマホをだす。
待ち受け画面のあきらと旦那様の笑顔にドキッとした。
太輔くんは、馴れた手つきでスマホを触って、すぐに返してきた。
太:「ハイ。登録できたよ。あきらくんの写真楽しみにしてるね」
太:「淳子さんからはお願いない?聞いてあげるよ?」
あきらを抱いたまま、私の顔を覗き混んできた。
顔が思いの外近くて、びっくりして動けなくなってたら、太輔くんの顔がゆっくり近づいてきて、唇にふんわりと優しい感触が。
一瞬の出来事で、気づいたら太輔くんはあきらを抱いたまま、歩きだしていた。
え?今の…キスしてくれた?
イヤイヤ、まさか。そんなわけない!よね?
慌ててあきらと太輔くんを追いかける。
前を歩く太輔くんの歩く速度が落ちた。私が追い付いたのに気づいてくれたんだ。
なんて優しい人なんだろう。
ボーっと、彼の後ろ姿を見ながらついて歩いた。