第5章 笑顔
淳子さんが大きな声で笑った。
淳子:「あはは。太輔くん、まだあるから大丈夫。お気に召したならどうぞ」
ものすごく幸せそうな笑顔で俺たちが食べる様子を眺めてる。
時折、あきらくんの口の回りを拭いたり、手を拭いたり。オニギリをパクつきながら。
やっぱり、淳子さんはママだから、今はママの顔の時。
でも、俺に笑いかけてくれる時にたまに見せてくれる笑顔が、小さな女の子のようでキラキラしてるのを俺は見つけた。
太:「玉、お前のデートどんな感じ?」
玉:「ん?なんか普通な感じ?思ってたよりはね」
玉:「あの、えっと、淳子さん?弁当ありがとうございました。美味しかったです。じゃ、また」
スタッフに呼ばれて玉森が戻って行った。
あきらくんもお腹いっぱいなようで、遊びだした。
淳子さんの手を引っ張ってどこかへ行こうとしている。
淳子:「待って、待って。あきら、ごちそうさまでした。やろ?」
あ:「ごちそうさまれした!」
両手を合わせておじぎする。
あきらくん、やることなすこと全部可愛い。
俺を見て笑顔で両手を伸ばしきた。
抱き上げてあげると、嬉しそうに抱きついてくれた。
淳子:「もぅ、あきらってば。太輔くんに甘えっぱなしやなぁ」
嬉しそうに笑って俺とあきらくんをみつめる。
淳子さんが手馴れた感じで片付けて立ち上がろうとしたので、手を差し出した。
フッと柔らかな笑顔で俺を見て手を重ねてくれた。指先が少し冷たい。
淳子:「うち、冷え性で手冷たいねん」
太:「オレも体温低いって言われる」
淳子:「そうなん?けど、暖かいよ。ありがとう」
淳子:「ふふ、デートみたい」
彼女が笑いながら言った。
淳子さんは背が高いから、小さな声でも耳に入る。
太:「ん?デートだよ?」
淳子:「まぁ、さすがにまだおばぁちゃんと息子と孫ではないか♪」
太:「また、歳の話?昨日の打合せの時も言ってたよね?そんなに気になる?」
淳子:「なる!なる!染み、シワ、産後太り?ヤバイもん!」
へへへと笑う彼女は年齢を感じさせない素敵な笑顔だった。
そのまま手を繋いで、あきらくんを抱いたまま、午後の動物園を回った。