第5章 笑顔
もぅ、お昼。びっくりするほど時間の経つのが早く感じる。
ちゃんと話せてるか不安で、太輔くんて呼び方が恥ずかしい。
振り返ったり、横を見ると彼はいつも笑顔でこっちを見てくれてる。
ゆっくり、私とあきらの歩幅に合わせて歩きながら話を聞いてくれている。
柔らかい優しさに包まれてる気がする。
スタッフさんに太輔くんがお昼の話をしてる。
木陰のベンチであきらとお茶を飲みながら待ってると、太輔くんが戻って来た。
太:「弁当用意してくれてるらしいよ。園内の他のカップルも休憩にこっちまで来るんだって。オレ、淳子さんたちと食べて良い?」
そう言って、お弁当を2つ袋から出してくれた。
淳子:「ごめん、太輔くん。うち、あきらにお弁当作って来てるねん。一緒に食べるんは全然良いんやけど」
持って来たお弁当箱を開ける。
あきらが玉子焼きに手を伸ばした。
淳子:「あ!こら!あきら、いただきますわ?」
あ:「いたらきます!」
両手を合わせてあきらは食べ始めた。
太:「手作り!?良いなぁ」
淳子:「たくさんあるし、太輔くんも食べる?あきら用やから、薄味で良かったら」
太:「食べたい!いただきます!ん、美味しい!」
太輔くんが私の唐揚げを食べた。しかも誉めてもらえたので、飛び上がりそうなぐらい嬉しかった。
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淳子さんが弁当を用意してた。あきらくんの為らしいけど、俺にも別けてくれた。
たしかに薄味だけど、味がないわけじゃなくて美味しい!
料理上手なんだな。
また、彼女の事が少しわかった。
ふと顔を上げるとこっちに歩いて来る人が居る。
あのシルエットは見覚えがある。
玉:「こんにちはー」
玉森。やっぱりお前か。
淳子:「え?あ、こんにちは。え?玉森くん?なんで?」
玉:「わぁ!手作り弁当だ!いただきます!」
言うなり、淳子さんが作った玉子焼きを食べた。
玉:「美味しい!オレもここで食べて良い?」
太:「おい、お前の弁当向こうにあっただろ?あきらくんの分がなくなっちまうから、お前はダメだ!」
蓋を閉めて、俺の方に寄せる。