第32章 抱き締めたい
大:「オレも泣かしてしもてたら藤ヶ谷くんと一緒やな…」
淳子:「…大倉くん…」
大:「…泣かんといて…やっぱりオレじゃあかんねやなぁ…」
大:「もう、きっぱり諦めるわ!だから最後に…1回だけで良いから名前呼んでキスしてくれへん?」
泣きそうな顔を無理に笑顔にしてくれる大倉くんに、ありがとうの意味も込めて、
淳子:「ただよし…ありがとう…」
腕を首に回して、少し背伸びして、ほっぺにキスをした。
大:「やっぱり口にはしてもらえんか…」
大:「次、産まれて来た時は、同級生のお隣さんになろな(笑)ほな、ずっと一緒やろ?(笑)」
淳子:「(笑)」
大:「…」
大:「泣かんといてな…藤ヶ谷くんに気持ち、もっかい言いや?」
淳子:「うん。ありがとう…」
大:「んじゃね…」
大倉くんの大きな手が頭を撫でてくれて、寒空に消えて行った…
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いつもの暗い部屋へ帰って来て、電気も付けないでソファに座る。
ボーッとたばこに火をつけようとポケットからスマホとライターを出す。
なかなか火がつかないライターにイライラしてたらスマホが光った。
この数ヵ月、消去できないでいた彼女からの着信。
太:「もしもし?」
淳子:「…」
太:「…淳子?」
淳子:「た…い…太輔…?」
太:「…どした?」
淳子:「…急に電話なんかしてごめん…うち、やっぱり太輔やないとあかんねん…抱き締めてもらう腕も、笑ってくれる笑顔も…」
淳子:「…キスしてくれる唇も…」
淳子:「思い出にはできへんねん…」
淳子:「こんな事言うてごめんなさい…藤ヶ谷太輔さん…葉山淳子はあなたの事が好きです…」
それだけ言うと、電話は向こうから切れた…