第32章 抱き締めたい
マンションの下で待ってると、遠くから単車が走って来たのが分かった。
大:「待っててくれたん?」
メットを外して笑いながらそう言った大倉くんは、一緒にお好み焼きを焼いた時よりも男らしく見えてドキドキした。
淳子:「バイクが楽しみで♪」
大:「バイク好きなん?」
淳子:「若い頃、回りが乗ってたからなだけ♪」
大:「それって男よな…?」
淳子:「うん!後輩の子とか、バイト先の先輩とか♪乗り方教えてもろた♪」
大:「乗り方て何?ハイ、メット」
淳子:「ありがとう♪彼女に怒られやん?このメット使て(笑)」
大:「彼女居ったら来てないやろ(笑)」
淳子:「あ!そか(笑)」
大:「笑わんといて(笑)てか、その乗り方危なない?」
淳子:「えっ!これが運転手に負担のかからん乗り方やて言われた事あんで?」
大:「(笑)オレには負担かけて良いから…腰にしがみついて♪オレが心配やから(笑)」
私の手を掴んで自分の腰にセットすると、何処へ行くのか教えてくれずに走り出した。
ドライブも楽しいけど、バイクもスリルがあって楽しい。
もやもやしていたものが飛んで行った気がして、スッキリする。
しばらく走って、白くて可愛い建物にバイクを停めた。
大:「ここのパスタ絶品やねんて!」
バイクを降りて、階段を上がりながら嬉しそうに話す大倉くん。
大:「あ、さっき電話した大倉です♪」
個室ではないけど、少し離れて、見えにくくなってる席に案内された。
大:「あきらくんは何時に迎えに行くん?」
淳子:「ん?いつも15時か16時には行くかな?」
大:「んじゃ、それぐらいには戻ろか♪」
二人分の注文が終わって、水を飲んでいたら、
大:「元気そうで良かった…」
優しい口調で急に言われて、驚いて大倉くんを見ると、口調と比例する優しい笑顔でこっちを見ていた。