第30章 欲しいもの
あきらの幼稚園の発表会が今年も無事に終わって、あっという間に暖かくなってきたと思ってたら、暖かいより暑くなってきた。
年長組になって、幼稚園最期の1年だから、行事が月1ペースでなにかしら用意されていて、相変わらずのモデルの仕事と両立させて、あきらは頑張ってる。勤務時間も2時間延びた。
冬に撮影した、翔くんとのドラマも評判が良くて、マネージャーの前田さんは、またドラマの仕事をと張り切っていた。
彼と私も、会えない日々が続いたりするけど、こまめに連絡してくれるし、夜中に顔だけ見に寄ってくれたり、早く終わった日はうちに帰って来てくれて、幸せな毎日を過ごしてた。
もうすぐ彼の誕生日…
プレゼントを悩んでいると、"クッキー"と一言。
前に翔くんにあげたのを、どうしてか知ってて自分も欲しいと言う。
彼の好きなブランドは調べたけど、何が欲しいか分からない…アクセサリーはすでにいくつも持ってるみたい…時計もけっこう…
zippoのライター…?高校生じゃあるまいし…
あきらは絵を描いてあげるらしい…
ネットで調べてみたけど、財布や時計やネクタイなど…
これだと思うものに巡り会わない…
困り果てていたある日。
太:「オレの誕生日、何するか決まった?」
久しぶりにこっちに帰って来て、ゆっくりしながらあきらと遊んでくれていた彼が急に言った。
太:「(笑)まだか…(笑)ちょっと付き合ってほしいところがあるから、一緒に行ってくれる?それがプレゼントで良いよ…」
笑顔でそれだけ言うと、またあきらと遊び始めた。
暑さが本格的になり始めた、彼の誕生日。
朝から迎えに来てくれて、リクエストされた、"二人ともちょっとだけお洒落な格好"で"多めに焼いたクッキー"を持って車に乗り込む。
少し髪の色が落ち着いて短くなってる彼にドキドキする…
何処へ行くのか、まだ教えてくれない…