第29章 付き合うという事
カタン。
玄関から音がした。
眠ってるあきらの顔を眺めていたら、ドアの開く音がする。
スマホを見ても彼からの連絡はない…
恐くて動けなくて、あきらを抱き締めて目を閉じていると、枕元に人の気配。
私の頭を撫でて、おでこにキスをするとしばらく動かない。
おそるおそる目を開けると…彼が居た…
太:「あれ?起こしちゃった?ごめん…」
太:「これ、置きに来ただけだから、そのまま寝て♪」
小さな紙袋を枕元に置いて出て行こうとする。
とっさに手を掴んだら、笑いながら
太:「どした?イヤな夢でも見た?」
また、頭を撫でてくれる。
久しぶりに会えた彼に安心して、この間からの女の子達の会話が浮かんできて、涙ぐんでしまった。
涙が流れる前に起き上がって、キッチンへお湯を沸かしに行く。
彼が後から入って来た。
太:「淳子?どしたの?」
淳子:「なんもないで?急に居るからびっくりしただけ。太輔こそこんな時間にどしたん?」
太:「今日、どうしても来れそうにないから、先に渡しとこうっ思って…誕生日プレゼント…」
振り返るとさっきの小さな紙袋を私に差し出してくれた。
淳子:「誕生日…あきらのもやけど、なんで知ってるん?」
太:「ん?オレってスゴい?」
私を引き寄せて髪を耳にかけながら笑う。
太:「…カレンダー見た♪…てか、泣いた?」
涙を拭うように手を添えてくれる。
太:「なんかあった?」
淳子:「ううん!なんもないで?」
太:「淳子…」
手を引かれて、ソファに座る。
太:「ハイ!どした?」
淳子:「…あの…」
太:「ん?」
淳子:「女の子からの誘いってどうしてるん…?」
キョトンとした顔で
太:「は?誘いって飲みに誘われたらってこと?断ってるけど…」
太:「先輩とか仲間内とか打ち上げとかは行くけど、女の子と遊びに飲みになんか行かねぇよ(笑)そんな時間あったらまっすぐ帰って来る!何?急に…」
当たり前の事のように言う彼に安心して、自然と笑顔になった。
太:「何?安心した?」
笑いながら、頬を撫でてくれる彼の手にさらに安心する。