第11章 煙想い*スモーカーR
いつもはもくもくと漂っている葉巻の煙も、が来るとなれば漂わない。
は葉巻の煙が嫌いだった。
怪我の見舞い、ということで来るとの連絡があって二時間。
「スモーカー、調子はどう?」
少し髪が乱れている。最速で飛んできたんだということがわかった。
「あぁ、良い」
「そっか」
にこりと笑ってベッドの側にある椅子に座った。
こいつが近くにいると、不思議と心が安らぐ。マイナスイオンでも出してんのかこいつは…。
「最近、スモーカーが追ってる麦わらについて個人的に調べてみたけど、変ね、彼ら」
「…普通の海賊じゃねぇな」
「そうね」
ふふ、と笑う。
こいつの笑った顔は、さらに気持ちが落ち着く。
「…わりぃ、そこの包帯とってくれねぇか」
「ん?これ?」
「あぁ。取り替えの時間だ」
「手伝ってあげる」
「⁈」
包帯をもってきて準備万端とでも言うような体制で待ち構えている。
「いや、」
「大丈夫、酷い怪我くらい見慣れてるし上半身も見慣れてる」
そういう問題じゃねぇ…と言いたいところだがきっとこいつはわかっちゃいない。
「はい、包帯とるよ」
ベッドの淵に座り、結局言われるがままになる。
「…またすごい傷作って…」
「まぁな」
胸元から腹筋にかけての切り傷を見て、俯くアカリ。
「死なないでよ」
「…そう簡単に死んでたまるか」
そう言って髪を撫でてやれば、うん、と柔らかく切なそうに笑った。
耐えられなかった。