第8章 肝試し*ロー
クラスのやつは大抵ずるいという。
何故かって?学校の行事であるキャンプの肝試しのペアがトラファルガーになったからだ。
私は即座に変えてくれと頼んだが、トラファルガーがそれを拒み、担任もお前が適任だと意味のわからないことを理由に撤回できなかった。当然、女子達からの目線はグサグサと突き刺さってきた。
そして当日である。
「…」
「お前こういうの苦手なのか」
先ほどから無口な私に馬鹿にするように話しかけてくるトラファルガー。
「………ナミがよかった…それかロビン…」
「なんか言ったか」
「いいえ何も」
と、その時がっと手を掴まれる。
「行くぞ」
「帰りたい」
ズンズンと指定されたルートへ歩いて行った。はずが。
「…お化け役の人とか全然出てこない…?」
「さぁな」
情けなくもトラファルガーの後ろにへばりつき、ぎゅっと服の裾を握ってついていく。
「後どれくらいなの…」
「さぁな」
「さぁなって…」
その時、バサバサっと鳥が飛んだ。見事にびっくりしたわけで
「…!!!!!!!」
「…ククッ…声出ねぇ程驚いたか」
「…もともとこういう時に声出ないんです私は」
ぶつくさと照れ隠しとともに言い訳をする。
「ねぇ、ルート違くないこれ」
「好きな女と二人になれんのにわざわざ邪魔されに行く馬鹿がどこにいる」
「なるほど…いやでも恐怖体験で二人の距離が一層縮まる作戦とかも…って」
トラファルガーの言った言葉を反復させる。何かおかしい。
「…は?」
「…ついた」
トラファルガーの顔から前に視線を移すと、月の光で照らされた綺麗な湖が広がる。
「わぁ…」
「なぁ」
「なに」
湖に見惚れながら返事をすると、目の前が暗くなって体が温かいものに包まれた。
「好きだ」
ゆっくりと上を見ると、月に照らされて端正な顔が映る。
「…なにいっ」
優しく風か吹き抜けて、その熱を一層強く感じさせた。