第1章 涙の祭り
完全に動揺して目が泳ぐまくってる隼斗
隣の女の子は“ん~?”って
天然ぶってんの丸見えの表情をしてる。
「お…前…仕事って…」
『あ~…なくなった。』
っていうか元々なかったし!
こんなはずじゃなかったから!
「…ゆ…浴衣…似合ってる」
『…そう?
そちらの方が似合ってんじゃない?』
「……」
蝉はどっちを応援してるの?
そんな風に聞きたくなるほど
ずっと、蝉は鳴いてて
水風船が割れたからか
泣いてる子供の声も耳にはいる。
でも、あたしの時間は止まってた。
おばさんの発言があるまでは…
「あら?ちゃんじゃな~い。
もぉ~!萌ちゃんは妊娠してんだから、
大人しくしてなさいって~!」
やっぱり変わらない元気はつらつな
隼斗のお母さん。
だけど…あたしの頭に一つだけ
抜けきれない言葉があった。
妊……娠…?