第6章 タイミング
『ん~…とれない…』
〈お姉ちゃん、右利きでしょ?〉
金魚すくいのおじさんが苦笑いで
あたしのことを見る。
えぇ…右利きなんですけど…
あたしの右手は彼に握られてる。
『ぁ…ぁの…大野…さん』
「んあ?…ん~…俺がとったげる」
そう言って手を繋いだまま
あたしの網を取っていった。
〈お兄ちゃん、愛してんだね~〉
「ふふっ…そーそー、愛してんの」
大野さん、
繋いでる手も
愛してる。なんて言葉も
全部、期待しちゃうじゃん。
握ってた手をまた握りしめた。
次はちょっと悲しい握り方