第6章 タイミング
『わっ!!お…大野…さん』
振り向くとふにゃっと笑う彼がいた。
VのグレーのTシャツに
首にはシルバーのネックレス
デニムにやっぱり黒いキャップ
焼けた肌が夕焼けに照らされて
ちょっとドキッとした。
「なぁにが辛いの?」
『え…い、いや…何も…っ…』
辛いわけない。
こんな人と付き合えたら、
きっと辛いことも幸せに感じる。
「ほれ、行こ?」
そう言ってちょっと逞しい腕が
あたしを求めてきた。
これって…手繋ぐって…こと?
「タイミング逃しちゃうじゃん。
後からの方が恥ずかしいよ?」
『で…でも…』
「もぉ…」
その逞しい腕は葉っぱを掴むように
でも、とても優しくあたしの手を握った。
『……///』
「俺、好き。
その浴衣…可愛い」
ちょっと照れてるのかなって
大野さんの耳の赤さを見て期待して、
握ってた手をもう一度握り直した。