Destination Beside Precious
第2章 0.For Seasons
ねぇ、幸せ。
やわらかく包み込む温もりの中で、このまま時間が止まればいいのにと何回考えただろうか。
誰かが泣いている。あなたは誰?
溢れた涙が呟く。本当のことを話すことってこんなに苦しいことだったっけ。
誰かが嗤っている。あなたは誰?
夢や願いをすべて叶えたいと思うのはエゴだろうか。
歪められた唇からこぼれた言葉は、だったら自分はとんでもないエゴイストだ。
遠いと思えば遠いし、近い気もする。
泣いている人、嗤っている人はぼんやりとしていて誰かは定かではない。
しかし、感情だけは自分のもののように胸の奥に浸透し広がる。
ああ、幸せなんだね。苦しいんだね。
幸福と苦悩の狭間の葛藤が痛すぎるほどよく伝わってくる。
胸が締めつけられる。
なんでだろう、どうしても他人事には思えなかった。