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Destination Beside Precious

第16章 13.Sunny Then Rainy ※




忙しかったゴールデンウィークも終わり、練習を終えた凛は宗介とのじゃんけん勝負で勝ち取った2段ベッドの下段でくつろいでいた。


午前に部屋替えを行ったのだが、特にこれといって大きな問題も起こらなかったようで凛は胸を撫で下ろした。
その証拠に、今この時間まで誰も部屋割りの件で凛の元を訪れていない。
ここで揉め事が起きると、仲裁は部屋割りを考えた部長である凛の役目であり責任でもあった。

今はちょうど他の部員達は夕食を終えて荷解きをしている頃だろう。
さほど荷物が多くなかった凛は、練習後すぐ荷解きをして早々に終わらせた。
入浴は済ませたし、寝るまではまだ大分時間がある。
凛は汐に電話でもしようかと考えていた。

しかし、凛の思いとは裏腹に。

それが起こったのは、嵐のように突然だった。

ドタバタと廊下を全力疾走する足音。

「なんだよ、うっせぇな」
「誰かが廊下を走り回ってんだろ」
さほど気にした様子の無い宗介の声が頭上から返ってくる。
誰かが廊下を走り回ることは、まぁよくあることだし、と凛も考えるようにした。

だが、その騒がしすぎる足音は次第に大きくなる。

嫌な予感がした。
足音が最大まで大きくなると、ふいに止まる。
そして次の瞬間、蹴破られるように凛達の部屋の扉が開けられた。

「部長!!!」
凛の部屋に来たのは2年部員だった。青ざめた顔で肩で息をしている。
ノックも忘れて駆け込むような用事とは一体なんだ。

「なんだよ、急に。そんなに慌てて」
「部長!!お願いです!!部屋割りを変えていただけませんか!?」
「は?」
早速問題が起こった。
嫌な予感は的中。全く嬉しくない。
頭痛を覚えながら、凛は泣きつく2年を宥める。

「落ち着け。何があったんだ。喧嘩か?」
「違います!けど、見たら分かります…!早く来てください!!」
確かに怒っているようには見えないから喧嘩ではなさそうだ。
どちらかと言えば、怯えているとか、助けて欲しいとか、そんな風に見える。

嘆願に来た部員に引きずられるようにして凛は彼の部屋に向かう。
ここでもまた嫌な予感がした。凛は眉を寄せる。


(たしかこいつと同室なのは…)

自分が作成した部屋割り表の記憶を辿る。辿った先にいたのは、あの神経質な夕陽の少年。
嫌な予感がまたもや的中する。


(夏貴だ…)
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