Destination Beside Precious
第3章 1.The Honey Moon
けれどこれからも長く、ずっとずっと一緒にいる為には絶対に言わなくてはいけないことでもあった。
俯く汐の頭に凛は手を置く。そしてそのまま優しく撫でた。
汐は顔を上げた。
自分の言葉を待つ汐に、凛は笑いかける。
「謝んなよ。要は記念日は通過点ってことだろ?」
凛の笑顔を目にした汐は安堵したように、うん。と頷き笑った。
「あー、でも半年とか、1年とかそういうキリのいいところは軽くお祝いしてほしいかな」
これからもお願いします的な、と汐は言った。
「豪華にお祝いしてくれるのは誕生日だけでいいよ」
あたしの誕生日4月22日ね!と汐はいたずらな笑顔を見せた。
凛の好きな汐のひとつ、出会った時と変わらないいたずらな笑顔。
「知ってるっつの。じゃ、お前俺の誕生日言えるかー?」
その笑顔に負けじと、凛は挑発的に口角を上げる。
それに対して汐は得意げに眉を上げた。
「知ってるよ!2月2日でしょ!」
「おっ、正解」
そう言って凛は汐の頭を軽く小突く。
「にしても、汐は記念日についてああやって考えるやつだったんだな」
「うん。今時珍しいって言われる」
夏休み前にクラスの人と恋愛の話をしたことを思い出した。
理想の異性や理想のシチュエーションなど、主に妄想トークだったが楽しかった。
その中で記念日について話題になった。
先ほど凛に言ったことを濁し且つやんわりと言ったら、その場にいた人に変わってると言われたのだ。
「まだまだ知らないことがたくさんだな」
「まだ付き合って1ヶ月だもん。そうに決まってるよ」
知り合ってもうすぐ5ヶ月だが、今の関係になってまだ1ヶ月しか経ってない。
まだまだこれからだ。
「俺、もっと汐のこと知りてえ」
「じゃあいっぱいお話しよ!あたしももっと凛くんのこと知りたいな」
「そうだな。...これからもよろしくな」
「あたしこそ。これからもよろしくお願いします」
行くぞ、と凛は手を差し出す。
汐はその手を取り、きゅっと握った。
自分の手を握る小さな、女の子の手を握り返して涼しい夜道を歩き出した。