第12章 感情ミートアゲイン
琉架に招かれるまま家にはいると、三年前と何一つ変わらない室内に勇希雄は涙ぐんだ。
「ここで待ってて。春さん呼んでくるから。」
琉架が靴を脱いだ瞬間、ドタドタと勢いよく青年が目の前に現れた。
その青年は、小さな声で息を荒げながら「…勇希雄」と言った。
あっ、と思った。
背も伸びているし、髪も少し長い。
印象は少し変わっているが彼は紛れもないあの人物だ。
「は…、春…!」
僕が彼の名を呼ぶと、春は勇希雄を抱きしめた。
春は今、感情を押さえられていない。そう思った。
でも今は思い切り抱き合って泣いてもいい。そんな気がする。
僕は春の背中に手を回し思い切り抱きしめ返した。
彼の着ているワイシャツの優しい匂いが、鼻をくすぐる。
「琉架。こっち。」
「あ、うん。」
奥で時雨の声がした。
気を使ってくれたのか、隣でいた琉架をリビングに呼んだ。
それと同時に耳元で春のすすり泣く声が聞こえた。
「勇希雄…。い、今まで何…で…!」
「ぅ…。ごめ、ん。」
声が出しにくいし、目の奥が熱い。僕自身もつられて泣いている。
「元気、だよ。俺。」
春が何か言う前に、僕の言葉で遮る。
春が輝に聞いていた返事を会ったらすぐにしようと思っていたからだ。
「はは…、痩せてやがる。何だよ…この髪。不潔、だな…。」
言い終わると、春は僕を抱きしめる力を強めた。
春も学校に来ていないこと心配しているのだろうか。
「これでも元気だよ。春だって…、中3の時に比べたら…ね。細くなってんじゃん。」
「まあ、な。でももう増えた方だ。"向こう"じゃ、規則正しいだけの生活しか…してなかったからな。」
と言うと、春は僕から腕をほどき、涙を拭いながらどこかへ向かおうとした。
「…春?」
「客間で話そう。上がってくれよ。」
「おーう。…春の部屋じゃだめ?」
「きゃ・く・ま・だ!!」
こうも部屋を嫌がれたのでしぶしぶ客間に入った。
こんなやり取りも、全て懐かしい。