第11章 再会イモーション
手を振って笑顔で輝と別れた僕は、再び春の家に向かった。
先程から前方に見えていた屋根が赤茶色の大きな家。あれが春の家だと僕は知っている。僕の記憶は当たっていた。
(いったいどうしたら、あんな大きな家に住めるんだ?昔は考えたこと無かったけど…、今思えば孤児院卒の春たちがどうして…。)
春が住んでいる家は、一般家庭には無いような大きさだ。
花の丘園を出ただけの当時普通の小学生が、なぜその家に住んでいるのか僕は全く納得がいかない。
(でも納得がいかないって言うと、差別になっちゃうか。誰かに借りたんだよね。きっと。)
幼なじみと言えど、知らない事は山ほどある。僕はそれが少し悲しく思えた。
春たちの家が近づいてきた。
(んで更に、この家を曲がると…!)
いた。
赤茶色の屋根の大きな家の前に。
暗いオレンジ色の髪をしたロングヘアの琉架が。
琉架がこちらに気づいて走ってきた。
そのたびにサラサラ揺れる髪は、本当にいい匂いがしそうだと思った。
「おはよう、勇希雄。」
「あ、おはよう琉架。ごめんね?待たせちゃった!」
「確かに遅かった!道に迷ったの?あり得ないけど。」
「迷ってない、迷ってない!知り合いと会っただけ…!」
僕が誤解を解こうとすると琉架は半信半疑の目を向けた。
「…そうなんだ。まあ、いいけど。春さんにメールするね。」
不満そうに口をとがらせながら春に〔勇希雄が来ました!〕と連絡する琉架。
いよいよ緊張してきた。
「うん。で何すればいいの?僕。」
「連絡したからもう中入っていいよ。」
「う…うん。」
(ぎこちな!僕いま、すっげーぎこちなかったぁぁ!!隠せ隠せー。動揺がバレたらお終いだぞー!!)
と思いつつも、勇希雄の歩き方は右手と右足が一緒になっていた。
「…なにあれ。…勇希雄、絶対動揺してるよ…。」
琉架は勇希雄に聞こえないように、小声でそう言った。