第11章 再会イモーション
「…春さん、時雨。」
「ん、何?」
「どうした、石依。」
キッチンに立っていた琉架はリビングの方に顔を出し、少し困ったような顔をしていた。
「い、今から勇希雄が来るって…。」
「「マジで?」」
時雨は持っていた箸を落としそうになり、春はコーヒーをこぼしそうになった。
「あ、隣のお兄さんだ!!」
「ほんとだ!お兄さんだ!!」
「みんなぁ!ひさしぶりだね♪」
門を挟んで、門の向こうには沢山の子供達がいる。
ここは『花の丘園』。
僕の家の隣にある。ここにいる子供は、一番小さくて0歳。大きくて18歳まで居られる施設だ。
「勇希雄くんおはよう!元気してた?」
「タギ先生!!おはようございます。もちろん元気ですよ!」
子供達の中から現れたのは花の丘園の先生・田木 響子先生だった。
花の丘の園園長の娘で、最近結婚したので実家でこの施設のボランティア教師をしている。
十年くらい前、タギ先生が十代の頃は、僕も遊んでもらってたなー。
「良かった。…毎日、楽しい?」
(…ん?何その質問。何か変じゃない?)
そりゃ最近家から出てないよ。5日くらい。
まぁ花の丘園は僕ん家の隣だし、18年居るわけだけど…。
「そうですね。毎日充実はしてます、ね。」
「そう…!!クスッ。久しぶりだったから、からかっただけ。」
にっこりと笑ったその顔は遊んでもらってた頃と変わらなくて、つられて笑顔になる。
(昔は響子お姉ちゃんと結婚するーなんて言ってたっけ…。)
いや、なに思い出してんだよ。
「みんなと遊ぶの、まだまだ悪くないと思わない?」
「そうですね。先生もまだ若いですからね。子供ができるまでは、思いっきり遊んでた方がイイと思いますよ。」
「え?そうね。忙しくなっちゃうもんね。…でも、そういう意味じゃないんだけどね。」
タギ先生は少し驚いた後再び笑った。
しかし、再び笑った顔はどこか儚げだった。
(…あぁ、そうか。)
タギ先生も僕が不登校なの知ってるんだ。
(だからかー。あの変な対話。)
僕に何を期待して
僕に何を求めて
俺のこと心配してるの?