第7章 一塁メモリーズ
「あらお帰りなさい、龍ちゃん。ご飯出来てるわよ。」
「ばあちゃん、ただいま。腹減ったよ。」
居間に続く襖を開ければ家族が既に揃っていた。
1人テレビを見ずに黙々と夕飯を食べる自分の父親と目が合った。
「随分遅かったじゃないか、龍也。友達と話でもしてたのか?」
父さんが箸を止めて問いかけてくるが、正直今は父さんと話はしたくない。
俺は目を反らしながら「別に。」と呟いた。
「ん?まさかお前…、夜遊びをしていたんじゃないだろうな!?球児がそんな事していいと思ってるのか!!!?」
ダンッと小皿を持った手を机に叩きつけて怒鳴ってきた。
父親のその態度に一気に怒りがこみ上げてきた。
「そんな事する訳ないだろ!?それを一番分かってるのは俺だ!!」
逆ギレをした俺に一番驚いたのはばあちゃんだった。「あんた達、夜遅くに止めなさい…?」と、止めに入った言葉も男2人の口論には何も効果がない。
「だいたい、あんたは何時も球児が球児がとか言って、野球のこと何も知らないクセに口出しすんなよ!!」
「お前の親なんだか口を出して当たり前だろう!!」
「何が親だよ!!親らしいこと何もしてないじゃないか…!今だって、俺のこと疑いやがって。今日はたまたま練習が長引いただけだ!!」
「止めなさい!!ご近所さんの迷惑だよ。」
ばあちゃんが精一杯の声を出した。それで仕方なく口論を止めた。
「ふざけんな…。」
誰にも聞こえないように呟いた。怒りが治まらない。