第1章 俺だけのモノ
ロビーにはまだ保菜美の
姿はなかった。
メンバーに見つかると
面倒なことになりそうだから
柱の陰に隠れた。
メンバーもスタッフも
ほとんど帰った頃保菜美が来た。
「すいません、お待たせしました!」
走ってきたみたいで
息を切らしている。
『そんな慌てなくてもよかったのに。
とりあえずそこ座ろっか。』
目の前のベンチを指さしふたりで座った。
待っている間に買っておいた
缶ジュースを差し出した。
「ありがとうございます!
これすごい好きなんですよ!」
『俺もすごい好きなんですけど。』
「そーなんですか?!
これ美味しいですよね~♪」
『違うよ。保菜美のことが
すごい好きなんですけど。』
「え??」
『そのジュース好きなことなんて
俺、ずっと前から知ってたよ?』
「え?なんで?」
『ずっと前から保菜美のことが
好きだからだよ。
俺がいくら気のある素振りしても
全く気づいてくんないんだもん。
そろそろ我慢の限界!
誰かにとられちゃう前に
ちゃんと気持ち伝えようと思って!』
目をまんまるにして驚いてる姿は
小動物のようですごく愛おしい。
すぐに抱きしめてやろうかと思ったけど
まだ返事もきいてないし我慢した。