第1章 affettuoso(アフェットゥオーゾ)
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君が怖くないように。
少しでも辛くないように。
頭で考えるのと、やってみるのとでは全然違う。
ゆっくり…って思うのに、湧き上がる熱が俺を急かすんだ。
それでも君が大好きで、本当に大事だから。
affettuoso(アフェットゥオーゾ)、優しく愛情を持って。
君を愛したいんだ。
ない!
確かにあったハズなのに。
間違いなくここに置いたハズなのに。
舌を絡めるような深いキスをして、いい感じに体温も上昇し。
下半身も刺激されてたって言うのに。
慌てて体を離す俺に驚く君になんて言えばいいんだろ?
「音也くん?あの…」
潤んだ瞳で見つめられたら、煽られてるような気がして。
また熱が上がりそうになるから、僅かにそこから視線を外す。
「えっと…やっぱ、まだ早かったかなって」
ゴメン!
それ、物凄い嘘。
早いなんて思ってないんだ、俺。
いつもチャンスを伺ってたんだから。
早く君を俺だけのものにしたくてさ。
なのに、どうして今日に限ってないんだよ?
いつこんな事になっても困らないようにって。
実は密かに枕の下にゴムを隠して置いたんだ。
そして今日はこの部屋にが来るって分かってたから。
夕べちゃんとその所在も確認済みなのに。
くそ!
トキヤも今日は「遅くなりますから」だなんて。