第1章 最後の手紙~The Last Letter~ 原田左之助
病院から出た俺は車を走らせ、丘を目指した。
丘についた頃にはすっかり辺りは暗くなっていた。俺は電灯を頼りに大きな木を見つけ手紙を探した。
手紙は案外早く見つかり、俺はそれをポケットにしまい、また病院まで急いだ。
朔の病室辺りが、騒がしくなっていた。
おばさんのすがるような泣き声が聞こえる
「っ、朔!!」
俺は中へ入り、朔を呼ぶ。
返事は…無かった。
寝てるだけなんじゃないかってぐらい
すげぇ綺麗な顔だった。
「…午後六時四十三分…ご臨終です」
「朔…朔ッ!!」
おばさん、泣いてるぜ…。
…朔…なんで返事…してやらねぇんだ…。
どのぐらい時間が経っただろうか。
俺はふと、取りに行っていた手紙をポケットから出して、読み始めた。
手紙には出逢った頃のことから朔がこれまでどう思っていたのかが綺麗な字で書かれていた。
出逢った頃のこと、喧嘩したこと、俺が朔に告白したこと、初めてのデート、観覧車の頂上でキスしたこと…。
最後の一文に目を通した時
俺の頬を伝う一筋の涙
…俺、泣いてんのか…。
そう、気づいた時にはどんどん涙が溢れてきて
冷たくなった小夜の手を握り俺は、声を押し殺して泣いた。
“最後に一つだけ…私の将来の夢は、原田朔になって、左之といつか生まれてくる子供と幸せな家庭を築くことです、これからも宜しくお願いします"
あいつからの最初で最後の手紙
俺はあいつの分まで生きる、そう誓った。
~END~