ふたりで紡ぐ魔法の呪文/ワンド・オブ・フォーチュン【エスト】
第1章 第一章
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益々戻った意味がない。
さっきの言葉を悔いているのに、追い打ちを掛けるような言葉しか出てこないなんて。
あぁ、いっそ嫌って貰えたら。
エストなんか大嫌い!
そう言ってくれたらどんなに楽だろう。
叶うはずもない愚かな望みなど、早く砕け散ってしまえ。
「エスト…用事は?」
どうしてあなたは…。
残酷な程に強くて優しいのだろう?
嫌われる覚悟なら、何度もしたのに。
あなたがその覚悟に応えてくれた事は一度もない。
「まだ、済んでないので…」
優しい言葉など掛けられない。
けれどせめてあなたの涙が止まるまでは、、あなたの傍に居させて下さい。
そうしてしばし沈黙か流れる。
「あの…エスト。凄く今更なんだけど、その…授業は良かったの?」
「本当に今更な質問ですね?僕の心配より、自分の心配をした方がいいのでは?あなた、この時間はイヴァン先生の授業だったのではありませんか?」
「あっ!!」
僕の言葉に、ずっと俯いていたが顔を上げた。
赤く潤んだ瞳と頬に残る涙の跡。
刻印の刻まれたこの手では、それに触れる事も許されない。
僕の視線を感じたのか、慌ててそっぽを向いたあなたは、
「べっ、別に泣いてた訳じゃないのよ?」
尚も僕を責めない。