ふたりで紡ぐ魔法の呪文/ワンド・オブ・フォーチュン【エスト】
第1章 第一章
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「なんで僕がこんな所に…」
文句の一つも呟かずにはやっていられない。
狂信派の長老たちが古代種に見せつけようと、僕をこの学校に入学させると言いだした時、内心思っていた。
そんな事が許されるはずなどないと。
けれど、未だこうしてここにいる。
あの古代種の双子が、僕がどう言う存在なのか気づかないはずなどないのに。
勉強熱心で実験好き、授業中も寮でもその気質から迷惑な騒動ばかり起こすユリウスの口癖ではないけれど、全くもってこの状況は「意味が分からない」としか言いようがない。
挙句、訳のわからない転校生には付きまとわれるし。
僕はただ少しでも静かに、極力誰とも関わることなく、ここを卒業したいだけなのに。
けれども同時に思ってもいた。
卒業して、その後に何が待っているのだろう?と。
あの集団の中に戻ったところで、僕に未来などありはしない。
いや、そもそも戻れるのだろうか?
古代種が狂信派の作り出した紛い物の僕を、そうやすやすと逃してくれるのだろうか?
彼らには到底敵わずとも、人には過ぎた力を持つ僕を危険分子と見なし、排除するのではないだろうか?
けれど、その考えは僕にとって恐怖ではない。
むしろ救いかもしれない。