第7章 だめ
私はノートを写す。
彼も何か真面目に勉強してる。
時間がもったいないなぁ、せっかく彼と一緒なのに。
「ちょっと疲れたなぁー…」
私は言ってみる。
顔を上げて、彼が微笑む。
「そうですね。何か飲み物を持ってきましょうか。温かいものがいいですか?」
「んー…私はぁ…」
私は彼のとこにスッと寄って、彼の肩に頭をのせる。
「雅樹くんがいい…」
「えっ」
「私…雅樹くんが…ぎゅうってしてくれたら疲れ取れるしー…もっと…してくれたらもっと頑張れる。
だから…して…」
私は彼を見上げる。
このままキスできるくらいの角度で。
彼が私の目をじっと見る。
「どうしたんですか…優子さん。しっかりして下さい」
え…
「最近、少しおかしいですよ。だいたい授業のノートをとらないで試験直前まで放っておくような人じゃなかったじゃないですか。
部活に対しても、以前ほどの熱が感じられないですし…」
お説教された…
私の目から涙がポロポロこぼれる。
「あ…いや泣かなくても…。やるべきことはきちんとしましょう、ということを言いたかったんです。僕は」
彼が私の肩にそっと手を置く。
「そういう真面目な女の子が好きなら…
なんで私にあんなことしたの…?」
しゃべりだしたら、もっと涙が出てきた。
でも頑張って話す。
「私の身体にそれを刻み込んだのは雅樹くんなのに。雅樹くんが私を変えたのに…。ぐすぐすっ…うわぁん…」
勢いがついて、もう涙が全然止まらない。
彼があわてて私をそっと抱き寄せる。
「いや、あの、あのね…あの、ごめん。そういう意味じゃない。
好きです。僕は今の優子さんも大好きです」
「ぐすっ…本当に…? 嫌いになってない? 嫌いにならないで…私のこと。お願い…」
「嫌いになんて…ならないです。なるわけがないですよ…」