第7章 だめ
授業中も休み時間も、彼のことばかり考えてしまう。
彼の顔、彼の声、彼の指…を、今ここで思い出すのはやめておこう…。
休み時間、私は自分の席で雑誌をパラパラめくる。
こないだ買ったブーツ。
何、合わせようかな。
やっぱワンピ?
でもワンピって脱がせにくいかな?
いっぺんに脱げるからいいのかな?
彼はどっちがいいのかなぁ、ふふ…
今まで休み時間は友達とおしゃべりしたり、次の授業の準備や軽く予習して過ごしてた。
でもそんなことより、彼との時間を思い出したり想像するほうが楽しい。
部活も…それほど興味を持てなくなったけど、部活を頑張れば彼がきっとほめてくれるから、ちゃんと出る。
それに、どうせ彼が部活の日は一緒に帰れないし。
…
早めに部活を切り上げて、家に帰る。
自分の部屋に入り、ベッドに寝かせてあるクマちゃんのぬいぐるみを抱き上げる。
「ただいま」
私はクマちゃんにチュッとキスする。
このクマちゃんは彼からのプレゼント。
彼だと思って、ぎゅうーっと抱きしめる。
私はクマちゃんと一緒にベッドに潜り込む。
やっと彼とのことを、思いっきり思い出せる時間になった。
彼が言ってたみたいに、私もこの部屋の、このベッドに、彼の姿を焼きつけたい。
彼がこの部屋に来たのは、まだ1回だけで、その日に初めてキスした。
本当にチュッてしただけ。
このベッドで、もっともっと…
いつ来てもらおうかな。
またテスト明け休みかな。
彼がしてくれるあれこれを想像する。
私、なんであんなことで悩んでたのかな。
もっと早く、彼に身も心も委ねて、思いっきり可愛がってもらえばよかった。
あんなに素敵なのに…。
思い出すだけで、息がはぁはぁしてくる。
私は自分の身体に手を伸ばす…。