第7章 だめ
朝の教室。
「おはよう…雅樹くん…」
「おはようございます。優子さん」
彼はいつものようにニッコリ微笑む。
私は彼の目を、じっ…と見て微笑む。
「えっと、どうかしましたか?」
私の様子を見て、彼が尋ねる。
「なんでもない。雅樹くんの顔が見たかっただけ」
私はしゃがむ。彼の机に手をついて、そこに頭を乗せる。
そして彼の顔を見上げる。
雅樹くん…好き…
私は目で伝える。
「えっ…? そ、そういえば優子さん、今日はお昼の放送当番の日じゃありませんでしたか? プログラムの準備は万全ですか?」
彼が真面目なことを言う。
真面目ぶってて、すごくエッチなくせに。
「んー…今日のプログラムはね、クラシック特集だし、ほとんどしゃべらないから平気。
そんなことより雅樹くんの顔見てたい」
私はニッコリ微笑む。
「そんなっ…。駄目ですよ、優子さん。クラシックなら題名が難しかったりするんじゃないですか?
だいたい優子さんは今までどんな簡単なプログラムでも、念入りに準備して挑んでいたじゃないですか。僕はそんな優子さんのことが…ハッ…」
彼の小言を聞く私の目から、涙がにじんでくる。
「嫌い…? 嫌いになった?」
うぅ…涙こぼれそう…。
「そ、そんな。嫌いになんてなるわけないです」
彼のその言葉を聞いて、私はホッとする。
「よかった…。じゃあ私、プログラムの準備してくる。お昼の放送、楽しみにしていてね。私、頑張る。雅樹くんのために」
私は立ち上がって、小さくガッツポーズする。
彼も小さく頷く。
そして、手を振って、放送室に向かう。
プログラムの確認と曲紹介の練習しておこうっと。
それで彼が喜んでくれるなら…。