第3章 変わる
映画デート中、彼はいつも以上に優しく世話を焼いてくれた。
彼の上着を私の膝にかけてくれたり、温かい飲み物を買ってこようかって言ってくれたり。
嘘ついてるみたいで心苦しい…
って嘘ついてるわけだけど。
だって言えない。
エッチなことしたくないから、家に行きたくないとか。
初めてキスするまでは、彼になら何されてもいいとか、むしろ何かされたいって思ってたけど…。
なんか、あんなふうに自分が…彼も…変わっちゃうなんて。
もう、頭の中ぐるぐるしちゃって映画の内容が入ってこない。
しかも、ちょっとロマンティックなシーンで彼に手を握られたり。
今までこんなことしなかったのに。
…
映画の後は喫茶店でおしゃべり。
「面白かったですね、今日の映画」
コーヒーを飲みながら彼が話す。
「うん、面白かったね。再現率高かったなぁ、あのキャスト」
内容はあんまり頭に入ってないので、とりあえず見た目の感想を話す。
「やっぱり優子さん、少し元気がないみたいに見えますね…。今日は早めに帰りましょうか。送っていきますよ」
彼がニコッと笑う。
「うん、ありがと…」
私は頷く。
とりあえず帰ろう…。