第18章 二泊三日
「…ひさしぶりに見た」
私の胸をじっと見下ろして、彼がつぶやく。
「なにその感想…」
私はガッカリする。
「あれ…。もしかして、なんか残念がられてる…?」
「うん…。雅樹くん、前なら可愛いとか綺麗とか言ってくれた」
「あっ、可愛い…綺麗…ふふ…。なんかちょっと大きくなった?」
半笑いで彼が言う。
「もういい!」
私はちょっと怒ったフリして手で胸を隠す。
「はい、手どけてね。この辺かな…」
彼は、私の手首を持ち上げて、私の胸と胸の間に耳を当てる。
……。
「あ…聞こえる。これが心臓の音か…」
「聞こえるんだ」
「うん。でも、普通じゃない? 早さ」
「あぁそうかも…。ちょっと落ち着いたみたい」
「そっか」
……。
私の胸に、じっと頭を乗せてる彼がすごく可愛い。
ぎゅっとしたくなる。
「はぁ…なんかいい。落ち着く」
彼がつぶやく。
もうだめ、可愛い。
ぎゅっとしちゃう。
私は彼の頭に手を添えて、ぎゅーっと自分の胸に押し付ける。
「ねぇ…お父さんお母さん帰って来ないですよね。忘れ物とか取りに…」
彼が私の顔をちょっと見上げて問いかける。
「もう帰って来ないと思うよ。2時間くらい経ったし…」
「だよね。大丈夫だよね」
「なんかそんなこと言われると…」
「あ、ごめん。ビビっちゃって…」
「今朝、お父さんねぇ…あんまり無理して勉強すんなよ、って言ってくれた」
「…なんかごめんなさい」