第17章 ありがとう
『…そんな感じで面白い本だったんですよ』
「いいね、面白そう。読んでみたい」
『貸しますよ。明日、学校で渡しますね』
「え、学校で? うーん…まあいいか。本の貸し借りぐらいするよね。普通のクラスメイトでも」
『…やっぱりまだ内緒なんですか? 付き合ってること』
「うん。だって私、みんなに言っちゃったもん。別れたって」
『別にまた交際始めたとか言えばいいんじゃ…』
「えー! そんなの恥ずかしいし!」
『何が恥ずかしいのか、よくわからないんですけど…』
「女子には女子の事情があるの! 」
『ふーん…』
雅樹くんが不満げにつぶやく。
私たちは毎晩、LINEか電話で10分ぐらいおしゃべりするようになった。
今日は電話してる。
「雅樹くん、みんなに言いたいの? 付き合ってるって」
『え、別にそういうわけじゃないですけど、隠す必要もないっていうか』
「みんなに知ってもらわないと、誰かにとられそうで心配?」
『いや、そんなことはないですけど』
「ふふ…」
『ふふ? 言ってもいいの?』
「言っちゃダメ。だって雅樹くん、答え間違った」
『全然意味わからないんですけど…』
…
翌朝、登校して席につき、荷物の整理をしている私の前に、雅樹くんが立つ。
手に持ってる本を指差して
「これ、昨日言ってた本」
みたいなことを口パクで言う。
「ぷっ。別にしゃべってもいいから」
私は声を出して笑う。
「え? いいの?」
彼も笑った。