第16章 間違い
頭打ってるからって、いちおうベッドに寝かされた。
「気分は悪くないですか?」
ベッドにもたれてる彼が、私の様子をのぞいて声をかける。
「うん、大丈夫。音は鳴ったけど、そんなにぶつかってないから」
「よかった」
私の頭がそっとなでなでされる。
気持ちいい。
「雅樹くんも一緒に寝よ。寝不足なんでしょ?」
「…やめておきます」
「なんで?」
「間違いが起こるといけません」
「間違いって…さっきのことみたいな?」
「…そうです」
彼が少し気まずそうに、うつむいて目をそらす。
私はベッドの上でガバッと身体を起こす。
彼が顔を上げる。
「起こしちゃえばいいから」
私は彼の顔を見つめて言う。
「ベッドの上で起これば、そんなの間違いじゃないよ。おいで」
彼の腕を引っ張る。
「いや、あの」
「あれ…出しとかなきゃ。ほら、あれ、あの…コンドーム。どこにあるの?」
「いや、待って」
「してしまえばきっとラクになるよ」
「えっ」
私は彼の顔をのぞき込む。
「ガマンしてるから変なことしたくなるんでしょ?」
「……」
「一度してしまえば落ち着くかも? 試してみよう?」
「……」
彼がベッドに乗っかってくる。
そして、ベッドの上にうつむいて座り込む。
考えてるの?
私は彼の姿を見つめる。
「えっとね…」
彼が口を開く。
「うん」
頷く。
「僕たち一度別れませんか?」