第16章 間違い
「お邪魔します」
彼の部屋に入るのは久しぶり。
なんかすごくドキドキしちゃうけど…
バレないようにしよう。
「はい、おみやげ」
私はドアの近くで立ったまま、カバンの中から、彼へのプレゼントを取り出す。
私が作った手作りクッキー。
「春休み中に何回か練習して、だいぶ上手になったんだよ」
「あ…ありがとうございます…。それに引きかえ僕は…本当にごめんなさい」
クッキーの包みを受け取った彼がペコっと頭を下げる。
「いいよ。雅樹くんいつもは私のこと待っててくれるし。昨日の夜、遅くまで勉強してたの?」
「はい…。春期講習は終わったんですけど、出来なかった部分が不安で…。後、何かしていたほうが気が紛れるというか…」
「雅樹くん無理しすぎ」
「えっ?」
「雅樹くんならいつも通り頑張ってたら大丈夫だよ」
「そう…ですかね…」
「無理して生活が不規則になって身体壊したりしちゃうほうが心配。学校休むことになったらその分遅れちゃうし。
もうすぐ学校始まるよ。早寝早起きしなきゃ」
「そう…ですね。あの、ありがとう…」
「うん。じゃあ私、今日はもう帰ったほうがいいかな?」
「えっ?」
「少しのんびり休んだほうがいいんじゃない? 雅樹くん」
「あの…」
「うん?」
彼が私をふわっと抱きしめる。
そして耳もとでささやく。
「帰らないで」