第1章 出会い
「えっ?」
何が何だか分からず、彼を見上げると
椅子に座ったあたしを彼が抱き締めるような体勢だった
「俺は月島裕翔。青山の美容室で美容師やってるから。よかったら今度遊びに来て」
と、名刺を渡される
名刺には雑誌でもよく取り上げられている有名な美容室の名前
立ち上がりざま、彼は有紗の耳元で
「俺、君の髪に一目惚れしちゃった。また会いたいな」
と爆弾発言をして去っていった
ハニーブラウンの長身の男、顔は整っているそんな人に惚れられたって…「まぁ髪だけど」
浮かれる気持ちを押しとどめようと、声に出して否定してみるが胸は高鳴るばかり
連絡先を聞かれたわけでもないし
と1人で悶々としていると
どうやらこちらの世界に帰ってきたような結花が、
「有紗!すごいねっ!あの人雑誌でもよく特集されてるイケメン美容師の月島裕翔じゃんっ」
と興奮MAX状態
あまり雑誌を見ないせいかそういう情報に疎い有紗でもその人がすごいことはわかった
他にも、何人も女優さんの指名を受けてるとか、デート前にあの人に髪をセットしてもらうと絶対に恋が叶うっていうジンクスを持っているとか、あの若さですごい出世をしている人らしい
「でも、ホラッアドとか交換したわけじゃないし、もう会わないよ」
自分に言い聞かすように、そうだよそうだよと頷くと
ぶしゅっと、結花にほっぺをはさまれた
「美しい髪は女をより美しくするっでしょ?このチャンスものにしなくてどうすんのっ?!」
と軽くお説教されて半ば脅されるようにしてやってきた美容室の前
そもそも論的に今日いるかも知らないのだ
意を決して、ドアを開けるとそこは別世界のよう
白でまとめられた室内はキラキラしていた
鏡の前に座りみんなが綺麗にしてもらって幸せそうにしている
ー人を幸せにできるってすごいな
素直に感心した