第2章 休憩時間に・・・
「す、すみません!気づかなくて」
「・・・・・」
背中を向けてうずくまる桜を視線だけで見た緑間は一つ大きなため息をついてから、
自分のTシャツを脱いで桜に着せた。
「とりあえずこれを着ておくのだよ」
「え?!」
突然着せられた大きなTシャツに驚きながらも、立ち上がり緑間を見る。
ブカブカで、胸元も大きく開いて、膝丈まであるTシャツ。
会って間もない、男性の衣服。なのに・・・
真夏にも関わらずぬくもりが心地よいと感じてしまう。
「・・・緑間君の、匂いがする・・・」
「い、嫌ならすぐに脱ぐのだよ」
愛おしそうに呟いた桜の言葉の意味が分からなかった緑間は、着せたTシャツを脱がそうと手をかけた。
「違うよ。そういう意味じゃなくて・・・安心するって言うか・・・」
そう言って見上げた桜の上目遣いに一瞬どきりとした緑間。思わず一歩後ずさった。
「おーい真ちゃーん」
そこに、間の抜けた声で高尾が姿を現す。
上半身裸の緑間、そのTシャツを着た桜。
「な?!何やってんのお前ら!!」
すっとんきょうな声を上げた。
「な、何でもないのだよ」
一瞬、何か言い訳をしようかと思ったが、面倒臭いと思い平静を装い足早に立ち去る緑間。
「・・・何でもなくないのだよ・・・」
高尾は、緑間を視線で追いながらため息のようにもらした。
「桜ちゃん、何があったの?」
「い、いえ、別に何も・・・」
仕方なく桜に聞いてみたが視線を逸らし口ごもった。そんな桜の顔は、耳まで真っ赤だった。
「ふーん・・・」
今は、それ以上の追求はあきらめた高尾だが、
「何かおもしろくなってきたんじゃね?」
と、一人楽しそうに笑った。