第6章 星空の下で
「ねぇ・・・」
沈黙を破ったのは桜だった。
「秀徳さんの合宿って、明日までなんだよね?」
肩に寄りかかったままの桜が呟いた。
「知っていたのか」
「昼間、高尾君から聞いたの」
そう言うと、桜はおもむろに立ち上がり
「戻るね。今日はここでいいから・・・」と笑顔を向け走り去ろうとした瞬間緑間は、
その細い腕を掴み、抱き寄せた。
「緑間・・・君・・・?」
「帰したく、ないのだよ・・・」
抱きしめた桜の肩に顔をうずめ、耳元で囁く吐息が熱い。
「前の合宿で別れてから、ずっと気になっていたのだよ」
桜の鼓動が跳ね上がる。
ーー「なぁなぁ、あの子可愛くね?」
高尾が桜に気づき、緑間にそっと耳打ちする以前に、
誠凛バスケ部員の誰かと笑顔で話す姿を見かけた時からずっと目が離せなくなっていた。
「好きなのだよ・・・桜のことが・・・」
抱きしめる腕に力を込める緑間。桜の瞳からは涙が溢れ、緑間の胸に顔をうずめた。
「本当・・・?」
「あぁ・・・本当なのだよ・・・桜が、好きだ」
抱きしめた体を離し、桜の瞳を見つめる緑間。
目尻に溜まる涙を、緑間の長くしなやかな指がそっとぬぐう。
「桜は? お前の気持ちが知りたいのだよ」
熱っぽい瞳の緑間から目が離せなくなる。
「私も・・・緑間君のことが気になって仕方なかった・・・好きです・・・」
そう答えると、緑間は再び桜をきつく抱きしめた。
「恋愛には不器用なばかりに、悲しい顔ばかりさせてすまないのだよ。
それでも桜が好きだと気づいたのだよ」
いつも無邪気に笑う桜に戸惑い素っ気無い態度を取り、その笑顔を曇らせてしまった。
悲しげな顔をさせたとしても、帰したくないと思うほど抱きしめていたいわがままな感情。
そんな緑間の背中にそっと腕を回す桜
「・・・大丈夫だよ。今、すごく幸せだから」
そう言うと、涙混じりの笑顔を見せた。