第5章 山合宿
時折空を見上げては歩き、止まっては空を見上げ、キャンプ場の明かりが遠くに見える場所まで来た。
「うわー。辺り真っ暗だぁ・・・それにすごく静かだなー」
外灯も点々としかなく、足元もおぼつかない敷地内。
すると前方から微かな足音と大きな人影らしきものが近づいてきた。
「え・・・何??」
暗がりに慣れた視力でも、判別出来ない。
ゆっくりと近づいてくる物体に恐怖で鼓動が早くなる。
「だ、だれ・・・?」
「その声は桜か?俺なのだよ」
恐る恐る声を出すと、思わぬ人物の声が返って来た。
「緑間君・・・?」
いっそう近くに来ても、顔ははっきりと見えない。
「こんなところで何をしているのだよ。まさかまた1人で・・・」
「え、うん・・・1人です・・・」
海での出来事を思い出し緑間が尋ねると、申し訳なさそうに桜が答えた。
「まったく、何かあったらどうするのだよ。で、今度は何をしていたのだよ」
「え・・・星がきれいだなーって・・・散歩を・・・」
緑間の意外な返答に、桜はおずおずと答える。以前のように、呆れて1人立ち去るのかと思いきや、
「はぁ・・・仕方ないから付き合ってやるのだよ」
そう言うと、緑間は桜の手を取り、歩き出す。
「え・・・」
「い、嫌か?」
桜の反応を見て、一瞬躊躇した緑間。
「ううん。嫌じゃないよ。むしろ、うれしいかも・・・」
桜は思い切って素直に気持ちを口にした。
「なっ!だ、黙って歩くのだよ」
桜の言葉に照れながらも、緑間のゆっくりとした歩調で2人は歩き出した。