第4章 2人の距離
翌日の練習は、午前中だけで終了した。それと同時に合宿の終了でもある。
「ありがとうございましたー!」
玄関の前に一同整列し、宿の主人に頭を下げた。
「桜ちゃん、またおいで。待ってるから」
「はい!ぜひ伺います」
桜が笑顔で答えると、女将さんがにこにこと手を振ってくれた。
「あれ、誠凛は合宿今日までかー」
遠くでそれに気づいて見ていた緑間の背後から高尾が声をかけた。
「当然だけど、彼女も帰っちまうんだよなー」
「当たり前なのだよ」
呆れた口調の緑間。
「でも、ま、携帯の番号とか聞いたんだろ?」
にやりと笑う高尾。
「必要ないのだよ。二度と会うこともないのだから」
「おいおい真ちゃん・・・ まぁ、誠凛にいるのは分かってるから会えなくはねーけどよ」
しれっと答える緑間にあわてる高尾。
そんなやりとりをしている2人に気づいた桜が、遠くで軽く会釈した。
「あ!ほら桜ちゃんこっち気づいたぜ!聞くなら今だって!」
慌てた高尾は、緑間の腕を掴みゆすった。
「必要ないと言ったのだよ。行くぞ高尾。練習だ」
「え・・・おい・・・」
無愛想に立ち去る緑間に寂しげな顔をした桜だが、再び笑顔で高尾に会釈すると、
軽く手を振ってから部員の後を追いかけて行った。
「てか、マジでいーのかよ・・・」
そうこぼして、仕方なく緑間の後を追ったのだった。