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【黒バス】真夏の海から

第1章 海合宿


海岸通りには、まだ人影があった。
ゆかたで夕涼みをする人や、浜辺で花火をする人の楽しげな声が聞こえてくる。
空には満月。海面をキラキラと照らし、風が頬を撫でてゆく。
桜は堤防に腰掛けて海を眺めていた。
波の音が規則正しく寄せては返す。そっと目を閉じて耳をすます。
満月に照らし出された淡い横顔。風になびく長い髪。
そんな桜に気づいて、足を止めた人物がいた。
「あれは確か誠凛の・・・」
そう呟いて、桜を見つめた。
気持ち良さそうに風を仰ぐ桜から目が離せなくなった。
すると、ふと桜が振り返った。一瞬、驚いたような顔をしたがすぐ笑顔で口を開いた。
「こんばんわ。確か、秀徳の方・・・ですよね?すごく遠くからシュート打ってた人!」
無邪気な言い回しに少々呆れるも、
「あぁ、そうなのだよ」と左手で眼鏡を軽く押し上げた。
「何してるんですか?」
さらに笑顔で問いかけてくる桜に完全に呆れ、ため息を一つもらして吐き捨てた。
「それはこっちのセリフなのだよ。こんな時間に一人であぶないのだよ」
見上げるほどの長身から頭の上に降ってきた言葉に桜は目を丸くした。
彼は、柄にも無いことを言ったと我に返り明後日の方向を向いた。
そんな彼を見て、くすっと笑った桜は
「心配してくれたんですか?ありがとう。でも大丈夫ですから」と付け加えた。
「そうか。ならば勝手にするのだよ」
そう言うと彼はそのまま桜を見ることもなく立ち去った。
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