第1章 海合宿
「なぁなぁ、あの子可愛くね?」
高尾は、緑間にそっと耳打ちした。
「興味ないのだよ」
「マネージャーかなー。あとで声かけてみよっと」
にやっと笑う高尾を横目に、緑間は彼女のことを一瞥した。
誠凛高校バスケットボール部は、夏合宿のため海に来ていた。
桜がこの合宿に同行することになったのは、5月に行われた学校行事の体育祭での縦割り班が、
2年生にしてバスケ部監督の相田リコと同じになり、仲良くなったのがきっかけ。
今年は合宿を2回行うため自炊になったのは良いが、リコは料理が苦手という話を聞いて
お手伝いしたいと申し出た。
そのことを伝えに桜が部活に顔を出したら、みんな泣いて喜んでいた・・・。
合宿翌日からは、秀徳高校の人たちも同じ民宿を利用し、体育館練習は合同となった。
2日目の夕食も終わり片付けを済ませ、お風呂上りに浜辺を散歩することにした桜。
1人で外に出ようとしていた桜を見かけた日向が声をかけてきた。
「どこに行くんだ?」
「風が気持ち良さそうなんで、ちょっと散歩でもと思って」
そう言って振り向いた桜の顔は、お風呂上りのせいかほんのりピンク色をしていた。
思わずどきっとした日向だが、
「そうか・・・暗いから気をつけろよ」
平静を装うのが精一杯だった。
「はい」
桜は笑顔で返事をすると玄関を後にした。